
水道の基礎知識マクロセル腐食コンクリート接触侵食
鋼管やダクタイル管などの金属配管をコンクリート構造物と接触させたまま埋設すると、電位差による腐食電池(マクロセル)が形成され、コンクリートと接していない部分が選択的に侵食されることがあります。これをコンクリートによるマクロセル侵食と呼びます。この記事では、マクロセル腐食の発生原理、原因、そして防止のための絶縁・防食対策をわかりやすく解説します。
地中の金属管が部分的にコンクリートと接触している場合、コンクリート部分のpHが高くアルカリ性であるため、接触部の金属電位が上昇します。一方、コンクリートと接していない部分は比較的低電位の環境(中性〜弱酸性の土壌)にあるため、電位差による腐食電池(マクロセル)が形成されます。電流は高電位側(コンクリート接触部)から低電位側(非接触部)へ流れ、非接触部の鉄がイオン化して溶出し、腐食が進行します。
・高電位部(コンクリート内):カソード反応 → 酸素還元反応
・低電位部(非接触土壌側):アノード反応 → 鉄がFe²⁺として溶出
・結果:コンクリートと接していない部分が選択的に腐食
・鋼管・ダクタイル管がコンクリート構造物に部分的に接触
・埋設配管が建物基礎・マンホール・擁壁などを貫通している
・土壌が湿潤・導電性が高い地域
・防食スリーブ・テープによる絶縁措置が不完全
・管が建物基礎を貫通し、コンクリート部分の外側で腐食進行
・5〜10年で管肉厚が減少、漏水に至ったケース
・コンクリート製マンホール壁に管が密着し、接触面がカソード化
・隣接する非接触部で局部腐食(孔食)が進行
最も基本的な対策は、金属管とコンクリートが直接接触しないように絶縁材で包むことです。
・ポリエチレンスリーブ:管全体を被覆し、コンクリートとの電気的接触を遮断
・防食テープ:継手や通過部を重点的に巻き付け、絶縁層を補強
建物や構造物を貫通する場合は、貫通スリーブ内に絶縁ブッシュ(絶縁筒)を挿入し、配管とコンクリートが物理的に触れないようにします。貫通孔の周囲には防水シール材を充填し、湿気・導電水の侵入を防ぎます。
マクロセル腐食は局部電池の形成が原因のため、外面防食も重要です。
・防食塗料で管外面を被覆(2層以上の塗布)
・ポリエチレンスリーブで全体を覆う
・必要に応じて防食テープで補強する
これらの処置を組み合わせることで、金属表面への電気的接触を完全に遮断できます。
・構造物貫通部は必ず絶縁・防水仕様とする
・貫通孔と管の間に余裕を設け、絶縁スリーブを挿入
・施工後にスリーブ破れ・防食テープの剥がれがないか確認
・鉄筋コンクリート構造物のアースと管路が電気的に接続しないようにする
・絶縁層の連続性確認(テスターで導通試験)
・ポリエチレンスリーブ破れ・継手部の隙間確認
・防食塗料の膜厚検査・ピンホール確認
・構造物貫通部の防水・防湿施工のチェック
コンクリートによるマクロセル侵食は、コンクリート接触部と非接触部の電位差で起こる腐食現象です。防止の基本は、金属管と構造物の電気的・物理的接触を完全に断つこと。設計段階からスリーブ・防食テープ・絶縁材を組み合わせた防食仕様とし、埋設前の確認を徹底することで長期的な安全性を確保できます。
マクロセル腐食は、目に見えない電位差が原因で発生します。設計・施工段階での絶縁処理が、後の大規模漏水を防ぐ最善策です。

