水道管:コンクリートによるマクロセル侵食とは?

2022年12月06日 12:55
コンクリートによるマクロセル侵食を解説するツバメに乗った救急水道サービスの水滴マスコット
水道管:コンクリートによるマクロセル侵食とは?|仕組みと防止対策・絶縁施工のポイント

水道の基礎知識マクロセル腐食コンクリート接触侵食

水道管:コンクリートによるマクロセル侵食とは?|仕組みと防止対策・絶縁施工のポイント

鋼管やダクタイル管などの金属配管をコンクリート構造物と接触させたまま埋設すると、電位差による腐食電池(マクロセル)が形成され、コンクリートと接していない部分が選択的に侵食されることがあります。これをコンクリートによるマクロセル侵食と呼びます。この記事では、マクロセル腐食の発生原理、原因、そして防止のための絶縁・防食対策をわかりやすく解説します。

1. マクロセル侵食とは?(原理と仕組み)

地中の金属管が部分的にコンクリートと接触している場合、コンクリート部分のpHが高くアルカリ性であるため、接触部の金属電位が上昇します。一方、コンクリートと接していない部分は比較的低電位の環境(中性〜弱酸性の土壌)にあるため、電位差による腐食電池(マクロセル)が形成されます。電流は高電位側(コンクリート接触部)から低電位側(非接触部)へ流れ、非接触部の鉄がイオン化して溶出し、腐食が進行します。

マクロセル腐食のメカニズム

・高電位部(コンクリート内):カソード反応 → 酸素還元反応

・低電位部(非接触土壌側):アノード反応 → 鉄がFe²⁺として溶出

・結果:コンクリートと接していない部分が選択的に腐食

2. マクロセル侵食が発生しやすい条件

・鋼管・ダクタイル管がコンクリート構造物に部分的に接触

・埋設配管が建物基礎・マンホール・擁壁などを貫通している

・土壌が湿潤・導電性が高い地域

・防食スリーブ・テープによる絶縁措置が不完全

3. 典型的な被害事例と進行パターン

事例A:コンクリート基礎貫通部での腐食

・管が建物基礎を貫通し、コンクリート部分の外側で腐食進行

・5〜10年で管肉厚が減少、漏水に至ったケース

事例B:マンホール接触部のマクロセル電池

・コンクリート製マンホール壁に管が密着し、接触面がカソード化

・隣接する非接触部で局部腐食(孔食)が進行

4. マクロセル侵食の防止対策

① 絶縁施工(コンクリートとの直接接触を避ける)

最も基本的な対策は、金属管とコンクリートが直接接触しないように絶縁材で包むことです。
ポリエチレンスリーブ:管全体を被覆し、コンクリートとの電気的接触を遮断
防食テープ:継手や通過部を重点的に巻き付け、絶縁層を補強

② 絶縁ブッシュ・スリーブの設置

建物や構造物を貫通する場合は、貫通スリーブ内に絶縁ブッシュ(絶縁筒)を挿入し、配管とコンクリートが物理的に触れないようにします。貫通孔の周囲には防水シール材を充填し、湿気・導電水の侵入を防ぎます。

③ 外面防食(複合施工)

マクロセル腐食は局部電池の形成が原因のため、外面防食も重要です。
・防食塗料で管外面を被覆(2層以上の塗布)
・ポリエチレンスリーブで全体を覆う
・必要に応じて防食テープで補強する
これらの処置を組み合わせることで、金属表面への電気的接触を完全に遮断できます。

5. 設計・施工時の注意点

・構造物貫通部は必ず絶縁・防水仕様とする

・貫通孔と管の間に余裕を設け、絶縁スリーブを挿入

・施工後にスリーブ破れ・防食テープの剥がれがないか確認

・鉄筋コンクリート構造物のアースと管路が電気的に接続しないようにする

6. 品質確認と検査項目

・絶縁層の連続性確認(テスターで導通試験)

・ポリエチレンスリーブ破れ・継手部の隙間確認

・防食塗料の膜厚検査・ピンホール確認

・構造物貫通部の防水・防湿施工のチェック

7. まとめと要点コピーボックス

コンクリートによるマクロセル侵食は、コンクリート接触部と非接触部の電位差で起こる腐食現象です。防止の基本は、金属管と構造物の電気的・物理的接触を完全に断つこと。設計段階からスリーブ・防食テープ・絶縁材を組み合わせた防食仕様とし、埋設前の確認を徹底することで長期的な安全性を確保できます。

【要点まとめ|コンクリートによるマクロセル侵食】
・発生原理:コンクリート接触部と非接触部の電位差による腐食電池形成
・被害部位:コンクリートに接していない側(電流流出部)
・主な対策:ポリエチレンスリーブ/防食テープ/絶縁ブッシュで接触防止
・施工注意:貫通部は防水・絶縁・防食を一体化/破れ・隙間の確認必須
・基本原則:金属管をコンクリートや鉄筋に直接触れさせない

マクロセル腐食は、目に見えない電位差が原因で発生します。設計・施工段階での絶縁処理が、後の大規模漏水を防ぐ最善策です。

コンクリートによるマクロセル侵食を勉強した手を振る水滴マスコットのイメージイラスト|救急水道サービスバナー
水道管の水漏れ修理に向かう作業車に乗る水滴マスコットのイメージイラスト
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