水道の基礎知識凍結・水抜き冬のトラブル対策
冬期の凍結・破裂を防ぐ最も確実な方法の一つが水抜きです。水抜きとは、配管内の水を意図的に排出(ドレイン)して空管状態に近づけ、氷結・膨張による破損リスクを避けるしくみ。
本稿では、水抜き栓・水抜きバルブの構造と設置位置/排水口(浸透ます)の考え方/先上がり・勾配のルール/外部排水式不凍給水栓のチェックポイント/積雪地の運用とNG行為/家庭での操作手順まで、現場目線で分かりやすく整理します。
0℃前後で水は氷となり体積が増えます。配管内で凍結(氷栓)が生じると、上下流で圧力差が生まれ、解氷時にピンホールや継手割れを誘発しやすくなります。空管に近い状態を作る水抜きは、そもそも凍らせない・凍っても破裂させないための消極的安全設計です。
・露出配管/北側・日陰/風当たりが強い場所
・長期不在で水が動かない/未断熱・薄い断熱
・ベランダ・屋外立水栓・床下の端部など
水抜きは、水道メーター下流側〜屋内立上り管の間に設けた水抜き用給水用具(水抜き栓/水抜きバルブ)を操作し、配管内の水を排水口(浸透ます等)に逃がす仕組みです。配管内に残水を作らないために、配管ルート・勾配・接続部・排水設備をセットで設計します。
水抜き用具は、原則メーター下流側に設置し、屋内に立ち上がる前段で系統の水を抜けるようにします。こうすることで、屋内側の露出・半露出区間も含め、広い範囲の凍結リスクを一括して低減できます。
水抜き後に水が残らないよう、鳥居配管(枝上げ後の水平戻り)やU字形状は避けます。先に上げずに溜まりを作らない配慮、あるいは配管を1/300以上の勾配で設置するのが原則です(先上がり配管・埋設配管ともに)。この勾配により、水抜き操作時に重力で水が確実に排水側へ流下します。
水抜き用具以降の配管が長い場合、将来の点検・更新・障害時の切り離しを容易にするため、適切な位置にユニオンやフランジを設けます。これにより部分的な撤去・交換が簡便になり、冬季のトラブル対応も迅速に行えます。
水抜き用具からの排水は凍結深度より深い位置に設けます。浅いと排水自体が凍って機能を失うためです。排水口付近は浸透ます(浸透桝)を設置するか、切込砂利等で埋め戻し、排水が地中に浸透しやすい構造にします。外部排水式の不凍給水栓では、排水口に砂利層を設け、逆止弁を併用して逆流を防止します。
・凍結深度以下/透水性の高い層を確保
・砕石・砂利で目詰まりしにくい層構成に
・土砂流入を防ぐ防草シート等の併用も有効
積雪の多い地域では原則として屋内設置式の水抜き栓を採用します。屋内で操作できるため、降雪・着氷時でも安全に水抜きが可能です。排水は配管で浸透ますへ導き、屋内周辺を濡らさないようにします。
外部排水式の不凍給水栓を用いる場合は、逆止弁を取り付け、排水口周りは砂利層で透水性を確保します。外気に触れる区間は熱損失が大きくなるため、保温材・風除けの対策も同時に講じます。
地下室など設置制約があり水抜き栓を設置できない場合、代替として水抜きバルブを用います。器具本体の排水口に配管を接続し、浸透ますに放流する構成にします。操作自体は水抜き栓と同様に、水を遮断→排水の順で行います。
① 止水:水抜き栓(またはバルブ)を閉じ、元の供給を止める
② 排水:家中の蛇口を順に開け、末端→上流の順で水を抜く
③ 器具側排水:トイレ・洗面の止水栓近傍、屋外立水栓も開放
④ トラップ維持:臭気逆流防止のため、未使用排水口には少量の水を注ぐ
⑤ 復帰時:水抜き栓を開け、各所でエア抜き→漏れ点検
※ 建物や地域の仕様により手順は変わることがあります。管理者・取扱説明に従ってください。
・鳥居配管/U字形状で水溜まりを作る(水抜きが不完全に)
・勾配不足(1/300未満)で排水が滞留
・排水口が凍結深度より浅い → 排水が凍って機能停止
・浸透ます不備(泥詰まり)で逆流・滞水
・外部排水式で逆止弁なし(逆流・衛生上の問題)
夜間の冷え込みが強い日は、就寝前に簡易水抜き(末端の一部開放)や、細く通水して凍結を避けます。風が強い日は露出部の風よけも効果的です。
長期不在では完全水抜きが原則。元止水→水抜き→各蛇口開放→トラップ維持(水封確保)の順で行います。帰宅時は徐々に通水し、継手・器具のにじみを要チェック。
解氷後は微小漏れが見つかることがあります。復帰直後にメーターの微回転や床下・屋外の湿りを確認し、異常があれば早期点検を。
・改善:凍結深度以下に排水口を再設定、浸透ますを増設、砂利層で透水性アップ
・改善:1/300以上の勾配付け、途中にユニオンを追加しメンテ性を確保
・改善:逆止弁を追加、排水口周囲を切込砂利で再施工し、透水性を回復
□ 水抜き用具はメーター下流〜屋内立上り間にあるか
□ 鳥居配管・U字を避け、1/300以上の勾配が付いているか
□ 長距離配管にユニオン/フランジが適所にあるか
□ 排水口は凍結深度より深く、浸透ますや砂利層で透水性を確保しているか
□ 外部排水式不凍給水栓に逆止弁を設けているか
□ 屋内設置式水抜き栓で安全に操作できるか(積雪地)
□ 操作手順が家族・管理者に共有されているか
・水抜き系統の実地確認、勾配・排水設備・逆止弁の有無をチェック
・浸透ますの透水性・凍結深度・砂利層の状態を評価
・ユニオン追加や配管ルート是正、保温・風よけの提案
・季節運用手順の整備、掲示物・マニュアル化の支援
水抜きは位置(メーター下流)・配管ルート(先上がり+1/300勾配)・排水設備(凍結深度以下の浸透ます)の三点セットで機能します。外部排水式は逆止弁+砂利層を忘れずに。地下室などは水抜きバルブ+排水配管で対応可能です。冬の前に点検し、家族・管理者で操作手順を共有しておきましょう。
設計の見直しや運用の整備に関するご相談は、救急水道サービスへ。現場に即した最適解をご提案します。