水道の基礎知識耐圧性能基準配管・継手構造
水道設備は常に水圧を受けており、長期間の安全な使用を確保するためには高い耐久性が求められます。
この性能を評価するための基準が「耐圧性能基準」です。
本記事では、水道設備の耐圧性能基準の定義、Oリング構造の仕組み、低水圧試験の必要性、そして試験の実施方法と例外条件について詳しく解説します。
「耐圧性能基準」とは、水道管や継手などに加わる水圧に対して漏水や破損を防ぐための設計基準です。
水道設備は日常的に水圧を受けるため、構造上あらかじめその圧力に耐えられる設計・施工が求められます。
この基準によって、急激な水圧変化や外的負荷がかかっても安全性が保たれるようになっています。
・給水装置や管材が規定水圧で破損・漏水しないことを保証
・水道設備の設計・製造・試験・施工に共通の安全基準
・水が出る部分(蛇口など流出側)は対象外
水道管や継手の多くには、漏水を防ぐためにOリング(オーリング)と呼ばれるゴム製のパッキンが使用されています。
Oリングは弾性体として機能し、水圧を受けることで管と管の接続部に密着し、水を通さない状態を作ります。
・Oリングは水圧で押し広げられ接続部に密着
・水密性を高め、振動や微小な動きによる漏れを防止
・主に可とう継手・伸縮継手などに採用される構造
Oリングは水圧によって密着性を得るため、圧力が極端に低下すると十分に接触できず、小規模な漏水が起こる場合があります。
特に伸縮継手・可とう継手など水圧依存型の構造では、低圧時にOリングが押し戻され、接触面が緩む現象が見られます。
・低水圧下でのOリング密着不良による微細漏水
・止水バルブ操作や一時閉止時に発生しやすい
・放置すると錆・腐食・水圧変動による破損につながる
Oリングを水圧で密着させるタイプの継手類では、通常の高水圧試験に加え、20kPaの低水圧試験を行うことが推奨されています。
この試験では、非常に低い水圧環境でも接続部が確実に密着し、漏水が発生しないかを確認します。
実際の使用環境に近い条件で安全性を確認できるため、耐圧試験と並ぶ重要な検査項目です。
・試験水圧:20kPa(極めて低い圧力)
・目的:低水圧でもOリング密着を維持できるか確認
・対象:Oリングを水圧で押し広げるタイプの継手
すべてのOリング構造に低水圧試験が必要なわけではありません。
ネジやクランプなどの機械的締付構造によってOリングを押し付けている場合、水圧の有無に関わらず密着性が確保されるため、低水圧試験の対象外となります。
・ネジ式やボルトクランプ式の継手構造は水圧非依存
・Oリングを物理的に押圧して密封を維持
・低水圧下でも漏水の心配が少なく、試験対象外となる
耐圧性能試験や低水圧試験を実施する際には、施工状態や部品の精度確認も重要です。
Oリングの取り付け位置や潤滑剤の使用、接合面の清掃状態など、基本的な作業品質が試験結果に大きく影響します。
・Oリングはゴミや砂を噛み込まないよう清掃して取り付け
・施工時の潤滑剤は適量を均一に塗布
・試験時は圧力計・ポンプの精度も定期点検
「耐圧性能基準」は、水道設備が日常的な水圧や突発的な衝撃に耐えるための安全基準です。
特にOリング構造を採用する継手類では、低水圧試験を行うことで、あらゆる圧力条件下での漏水リスクを防止できます。
安全で信頼性の高い水道システムを維持するためには、設計・施工・試験のすべての段階で基準を遵守することが不可欠です。