
水道の基礎知識配水本管と取出し防食・腐食対策
配水本管(鋳鉄管・ダクタイル鋳鉄管等)から宅地側の給水管を取り出す際に使用する分水栓(サービスサドル/サドル付分水栓)は、土壌・電食・水道用具間の異種金属接触などによる腐食リスクに晒されています。
本稿では、現場で必須となる分水栓の防食工(外面防食・通水口の防食コア・切管部の内面防食塗装)を、目的・材料・手順・検査・よくある不具合まで整理。新設・更新・補修のいずれにも役立つ実務ガイドです。
分水栓の防食工は、配水本管に穿孔・分岐して取り付けるサドル付分水栓周辺の腐食を防ぐための施工一式です。主な範囲は次の3点です。
① 通水口(穿孔部)の防錆:防食コアの挿入 … 本管穿孔面を保護し、腐食進展と流量損失・渦流による局部腐食を抑制
② 切管部の内面防食:補修塗装 … 切断・加工により露出した金属素地をダクタイル管補修用塗料で被覆
③ 外面防食:サドル全体の被覆 … ポリエチレンシート等で包み、土壌と金属の接触を遮断(電食・土壌腐食を低減)
・本管材質(FC・FCD 等)と分水栓品番の適合確認
・穿孔径・防食コア寸法・ガスケット仕様の整合
・異種金属(真鍮・ステンレス等)接触部の絶縁要否
・本管外面の土砂・錆・皮膜・油分を除去(ワイヤブラシ・清拭)
・穿孔面の切粉・バリ完全除去、乾燥状態を確保
・サドルボルトの規定トルク・対角締めの実施
・穿孔後の芯出し・面一確認、シールの座り点検
鋳鉄管を穿孔し分岐した通水口は、切削によって素地が露出し、フチ部で局部腐食が進行しやすい領域です。ここに防食コア(ノズルインサート)を挿入して金属露出を覆い、腐食と渦流による摩耗を抑えます。
① 穿孔・バリ除去 → ② 防錆プライマー(必要時) → ③ 防食コアを規定方向で挿入 → ④ 座り・段差・突出有無を確認
※ 材質は樹脂・非金属系が一般的。金属同士の電食を避ける設計が望ましい。
本管の切断や内面露出が生じた場合は、ダクタイル管補修用塗料を所定膜厚で塗布します。乾燥・硬化前の通水はピンホール・膜はがれの原因となるため、メーカーの可使時間・乾燥時間を厳守します。
・素地調整:清掃・脱脂・錆落とし(Sa 2½ 相当を目標)
・塗装:プライマー→中塗り→上塗りの指示に従う(製品仕様)
・検査:膜厚ゲージで確認、ピンホール検査(ホリデーテスト)
サドル付分水栓などの給水用具は、ポリエチレンシートで全体を覆うように包み込み、粘着テープ等で隙間なく密着・固定して、土壌との接触を遮断します。これにより土壌腐食・電食の進行を抑制します。
・巻き始めは下側から、重ね代を一定にしてラッピング
・ボルト頭・フランジ段差は緩衝材で面を出し、破れを防止
・端末は上向きで止める(下向き終端は浸水リスク)
・テープは周方向+縦方向のクロスで固定し、密着を確保
防食設計では、土壌腐食(含水率・酸性度・硫化物)、電食(迷走電流)、異種金属接触の三要素を考慮します。必要に応じて本管側は工区方針に従い、被覆・絶縁・犠牲陽極・排流対策などを組み合わせます。分水栓まわりはまず被覆で土壌と隔離するのが基本です。
・サドル座り/対角締めトルク記録
・防食コア寸法・挿入状態(段差・突出なし)
・内面塗装の膜厚・ピンホール検査
・PEシートの連続性・破れなし・端末止め位置
・穿孔前の本管外観、穿孔径ゲージ
・防食コア挿入直後のズーム写真
・内面塗装の膜厚測定中の写真
・包み込み完了後の全景・端末部ディテール
・防食コアの未挿入/逆向き挿入 → 必ず方向マーキングを確認
・内面補修塗装の乾燥不足 → 仕様書の可使時間・乾燥時間を厳守
・PEシートの破れ・浮き → 段差を緩衝材で整え、クロステーピング
・サドルボルトの片締め → 対角・規定トルクで再締付
供用開始後は、エリアDMAの夜間最小流量の変化、道路面の湿り・陥没兆候、舗装割れの再発などを監視し、異常があれば早期に掘削点検します。防食層の損傷が疑われる場合、再被覆・追加被覆(熱収縮スリーブ等)を検討します。
分水栓の防食工は、防食コア(通水口保護)+内面補修塗装(露出素地の被覆)+外面被覆(PEシート包み)の三位一体。
「清浄・乾燥・密着・規定トルク・記録」の基本を守ることで、長期にわたり漏えいと腐食を抑制できます。

